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遺墨展作品解説ページ

このページでは、全2会場で展示している全ての作品について、読み方、意味、エピソードなどを解説いたします。

旧上田家住宅

~ 会場①(主屋1) ~

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【読み方】

わがきみは まつのうわばにおくつゆの つもりてよもの うみとなるまで

わ可君盤 松の上葉ニ於く露能 積里て四方能 海となる万天

【解】

私にとって大切なあなた(の命)は、千年の緑を変えない松の葉に置く露が、流れ集まつて世界の大きな海になる迄、永久に栄え続くことであるよ。

 

【鑑賞】

平安時代後期の歌人、源俊頼の歌。

本歌は「君が代は…」で始まるが阿部先生は、「いま『君が代』って耳にしただけで過剰に反応する人が居てるやろ?」と苦笑いしながら「わが君は…」に変えて書き、作品展に出展された。

歌の意味を阿部先生から教わった際、今から約1,000年前に現代人よりも壮大で豊かな感性を持っていた人がいたことに非常に感動した旨をお伝えしたところ、作品展に出展されなかった作品の中で最も良いものを下さった。

【読み方】

ねんげみしょう

【解】

言葉を用いずに、心から心へと伝える妙境のたとえ。

仏語。釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で説法した際、花をひねり大衆に示したところ、だれにもその意味がわからなかったが、ただ摩訶迦葉(まかかしょう)だけが真意を知って微笑したという故事。そこで釈迦は彼にだけ仏教の真理を授けたといい、禅宗で、以心伝心で法を体得する妙を示すときの語。

【鑑賞】

阿部先生は、一を聞いて十を知るタイプのお方であり、またそのような人を好んでいらっしゃった。この四字熟語はまさに先生らしい御作品である。

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【読み方】

わへい

【解】

仲直りして平和になること。また、平和。

【鑑賞】

平成17(2005)年、ご自身の講習会で行かれたアメリカで案内された、陶芸絵付け体験の店にて絵具筆と黒色の絵の具で書かれたもの。墨と和紙で書かれる通常の御作品よりも先生の筆遣いが鮮明に分かる。

本作品を観ながら、肚を意識して利き手で先生の筆遣いを是非たどって頂きたい(注:作品には触れず離れたところで)。

~ 会場②(内蔵) ~

【読み方】

さゆうをば きるもはらうも うちすてて ひとのこころは すぐにはせゆけ

左右をは きつもはらうも 打すてゝ 人の心は すくに馳せ行け

【解】

阿部先生は、「解説は全く致しませんが(道歌は)皆さんの心読・身読によって翁先生の真にふれて下さい」と仰っていました。

【鑑賞】

合氣道開祖、植芝盛平翁先生の道歌。(合氣道の)道歌とは、開祖が思い感じたことを五七五七七の31文字にまとめられたもの。

道歌は、8mmフィルム等の映像からは分からない開祖ご自身のお気持ちや想いが大変良く分かるため、阿部先生は道歌を良く研究されていた。

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【読み方】

たかむすび

高む寿比

【解】

(人と人とを)結ぶこと。相手と仲良くなる状態。

【鑑賞】

植芝盛平翁先生は

『合氣道を修める者は古事記を胎蔵(たいぞう)せよ。合気道は古事記の営みである』

と仰っており、阿部先生は古事記も深く研究されていた。

この「高むすび」は、古事記で二番目に登場する「高御産巣日神(たかみむすびのかみ)」から尊敬語を取り除いたもの。

【読み方】
きのみわざ あかしろたまや ますみたま あいきのみちは おどのかんわざ

 

【解】

阿部先生は、「解説は全く致しませんが(道歌は)皆さんの心読・身読によって翁先生の真にふれて下さい」と仰っていました。

【鑑賞】

合氣道開祖、植芝盛平翁先生の道歌。(合氣道の)道歌とは、開祖が思い感じたことを五七五七七の31文字にまとめられたもの。

道歌は、8mmフィルム等の映像からは分からない開祖ご自身のお気持ちや想いが大変良く分かるため、阿部先生は道歌を良く研究されていた。

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【読み方】
うるわしき このあめつちの みすがたは ぬしのつくりし いっかなりけり

美しき こ能天地の みす可多盤 主の作りし 一家也分里

 

【解】

阿部先生は、「解説は全く致しませんが(道歌は)皆さんの心読・身読によって翁先生の真にふれて下さい」と仰っていました。

【鑑賞】

合氣道開祖、植芝盛平翁先生の道歌。(合氣道の)道歌とは、開祖が思い感じたことを五七五七七の31文字にまとめられたもの。

道歌は、8mmフィルム等の映像からは分からない開祖ご自身のお気持ちや想いが大変良く分かるため、阿部先生は道歌を良く研究されていた。

この作品は、私(竹田)の結婚祝いとして贈って下さったもの。

【読み方】
御民われ いけるしるしあれ 天地の けがれる今を みそぎ行かん

 

【解】

天皇の民である私は、生きているかいがあります。天地がこのように穢れている今、禊を行じて参ります。

【鑑賞】

海犬養岡麻呂(あまのいぬかひのすくねをかまろ)作の「御民我 生けるしるしあり 天地の 栄ゆる時に あへらく思へば」に、禊行者であるご自身の気持ちを盛り込まれたのではないか。

阿部先生は昭和15(1940)年、25歳から70年以上もの間、禊を行われていた。

柄付きの色紙の、金地の部分にかかっている文字のバランスの素晴らしさも鑑賞のポイントの一つ。

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【読み方】
ひこばえ

 

【解】

イネ科などの植物の根元付近から新芽が伸びて株分かれすること。

【鑑賞】

ここでは特に「分蘖(ぶんけつ)」のことを指し、稲(コメ、特に玄米)の生命力の強さを説かれている。

​阿部先生は禊と同時期に玄米を召し上がるようになり、

「玄米は生きており白米は死んでいる。生きたものを少し食べなさい」

と、玄米食を我々に良く勧められていた。

【読み方】

きんしつわす

【解】

「琴」は小型の琴、「瑟」は大型の琴で、琴と瑟とは常に合奏し音がよく調和するの意から、人と人の仲、特に夫婦の仲がむつまじいことのたとえ。

「琴瑟相和(きんしつあいわす)」ともいう。

 

【鑑賞】

金婚式を迎えられる夫婦への贈り物として、ある自治体から毎年色紙を依頼されていたもの。

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【読み方】

いまもなほ うめみるあにも にわしろし

今もな本 梅見つあ尓母 庭志ろ之

【解】

【鑑賞】

瓦頭(がとう。軒丸瓦の先端の円形または半円形の部分)が印刷された色紙にゆったりと書かれたもの。文字と瓦頭のバランスもご鑑賞いただきたい。

【読み方】

あいきとは よろずわごうの ちからなり たゆまずみがけ みちのひとびと

合氣と盤 よろ徒和合の 遅可ら那里 多ゆま須み可分 道能人々

【解】

阿部先生は、「解説は全く致しませんが(道歌は)皆さんの心読・身読によって翁先生の真にふれて下さい」と仰っていました。

 

【鑑賞】

開祖が合気道に関する口伝や御自身の気持ちを31文字に歌ったものを「道歌」と呼んでいる。特に「合氣とは」で始まる道歌は複数あり、本作品はそのうちの一つで、阿部先生が良く色紙に書かれた道歌でもある。

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【読み方】

こい(とらのい)

【解】

虎が他の獣類を恐れさせる威力。強大な武力・権力などをいう。

 

【鑑賞】

阿部先生の天之武産(あめのたけむす)合氣塾道場では毎年、大晦日の夜から翌日(元旦)にかけて越年稽古を行い皆で新年を迎え祝うのだが、新しい年の干支にちなんだ故事成語等を色紙に数枚書かれ、直会(なおらい)の際に年男や年女の方に贈られていた。私(竹田)は寅年のため、この色紙を頂くことが出来た。

どのような虎を思い浮かべながら阿部先生は色紙に書かれたのだろうか。

【読み方】

合氣とは 愛のちからの もとにして 愛はますます さかえ行くべし

合氣と盤 愛の遅可ら能 もと耳して 愛ハ万須ゝゝ さ可え行久へ之

【解】

阿部先生は、「解説は全く致しませんが(道歌は)皆さんの心読・身読によって翁先生の真にふれて下さい」と仰っていました。

 

【鑑賞】

この道歌も「合氣とは」から始まるもの。他には、

『合気とは筆や口にはつくされず言ぶれせずに悟り行へ』

『合気とは解けばむつかし道なれどありのままなる天のめぐりに』

などがある。

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【読み方】

たちひにとりなす(とりなせ)

【解】

我が国最古の書物である「古事記」には、神々が合気道をしている様子が描かれているといわれている。その場面で一人の神様がご自身の手を立氷(つらら)のように、すなわち冷たくて堅く折れない手にした、とある。

 

【鑑賞】

立氷に取り成したその次は、手を剣刃(つるぎは)に取り成した、と書かれている。これらは合気道を修める者の目標の一つと言えよう。

なお合気道開祖 植芝盛平翁先生は、「合気道を修める者は古事記を胎蔵(たいぞう)せよ。合気道は古事記の営みである」と仰っている。

阿部先生は気が向いたら合気道に関連する言葉や開祖の口伝を色紙に書き、我々に下さった。

~ 会場③(離れ) ~

【読み方】

あいき

【解】

 

 

【鑑賞】

「合氣」と書かれた御作品は多いが、「合気」は珍しい。ゆったりと書かれている阿部先生のお気持ちを是非とも感じ取って頂きたい。

 

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【読み方】

みのるほど かしらのさがる いなほかな

みのる本と かしら能さ可る いなほ可那

 

【解】

稲の穂は実が入ると重くなって垂れ下がってくる。学問や徳行が深まるにつれ、その人柄や行為がかえって謙虚になることのたとえ

 

【鑑賞】

御自らに厳しかった阿部先生らしい御作品。

大変細い筆で繊細に書かれており、筆遣いも鑑賞のポイント。また、永守重信市民会館に展示してある大きな作品との対比もお楽しみ頂きたい。

 

【読み方】

そくはん

【解】

(相手の力を)速やかに返しなさい

【鑑賞】

植芝盛平翁先生の口伝に『もろたら かえせ』というものがあり、阿部先生は我々にいつも説いて下さった。
合氣道のコツではあるが、一般社会においても「何かしてもらったら、その人か他の人に返しなさい」と置き換えて心掛けることが出来る。

余談だが、阿部先生から私(竹田)が最初に頂いた思い出深い御作品。平成5(1993)年。

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永守重信市民会館

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【読み方】

たけみかづち

 

【解】

我が国最古の書物である「古事記」には、神々が合気道をしている様子が描かれているといわれている。その場面で、千人力の神様に力一杯手を握られた一人の神様が、ご自身の手を立氷(つらら)のように、すなわち冷たくて堅く折れない手にした、とある。

【鑑賞】

表装の一番上から一番下まで、約3.5mもある気迫に満ちた大作。80歳代後半に書かれたというのも特筆すべき点。

【読み方】

がんさたんりき

【解】

力は胆(肚の力)に勝てず、胆は作(技)に勝てず、作は眼(眼力)には勝てない。

武道全般の極意。

 

【鑑賞】

阿部先生は、普段は穏やかで優しい眼をされていたが、合気道や書道の時の眼は非常に厳しく、傍に居ててもヒヤリとする程であった。

なお、大阪府吹田市立武道館「洗心館」には横書きされた作品が飾られている。

 

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